創刊号について

特集

いま、なぜ空間は退屈か。

批評のための運動体「近代体操」は、一冊の雑誌をつくるにあたって、大ざっぱなテーマを決め、そのテーマに関する定期読書会や不定期のイベントを一年間にわたって行なってから、特集テーマを明確化し、雑誌制作に取りかかる、という手順をとっています。

この取り組み全体をわたしたちは「セッション」と呼びます。「セッション」を通じて、書き手の間で問題の所在についてコンセンサスが得られます。そのうえで、各自の問題意識からのアプローチします。この方針によって、雑誌制作のみならず、その過程や事後的なイベントも含めてひとつの「批評的実践」とみなすことができるようになるでしょう。

「セッションⅠ」では、「空間/場所」をテーマに設定し、一年間(2021年6月~2022年6月)の読書会を行ってきました。この「セッションⅠ」の総括として、雑誌『近代体操』の創刊号は刊行されます。

目次

《巻頭言》
都市の陰鬱を超えて――いま場所の批評はどこにあるのか(左藤青+松田樹)

《特別インタビュー》
藤村龍至:郊外をアップデートせよ!
(聞き手:左藤青、松田樹、古木獠)

《論考》

第一部:空間をいかに表象するか――風景の問題
村上春樹の「移動」と「風景」(松田樹)
地図の敷居をまたいで、 ――ルイジ・ギッリの「フォトグラフ」(左藤青)

第二部:空間に外部はあるか――現代文化における脱出の夢
凹凸の地図をつくる――夜好性・米津玄師・「猫町」(武久真士)
来るべきメタバースのために――ユートピアの在りかについての再考(草乃羊)

第三部:空間は組み変わるか――身体を上演する
悪場所の経験、あるいは<現実>の演劇的侵犯(古木獠)
舞踏の空間――多義的な身体のために(安永光希)

《コラム》

撮影後記(麗日)
歴史―地理はレイヤではない(重永瞬)
場のものがたり(Rmbd)
負債の語り――トニ・モリスン『ビラヴド』をめぐって(懶い)
見えない空間としての福島 「原発」都民投票に関わって(矢田冨士子)

《巻末座談会》
「空間/場所」をめぐって

《読書会で扱った書籍一覧》

《編集後記》

《近代体操執筆者紹介》